「中国人旅行者]はなぜ「青森と佐賀」に殺到するのか!?「LCCと直行便、QR決済の影響」!

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中国人の旅行者は爆買いのイメージが残っているものの今は日本の熱い観光地として青森と佐賀に注目が集まっている。

現在のインバウンドの内容とは?

先日、花王の紙おむつ「メリーズ」の売上げが大幅に下落していると報じられた(2月21日の記事参照)。理由として中国人の爆買いが減ったことが挙げられている。消費者として買ったものをネットを通じて売る、いわゆる「転売」を規制する法律改正が中国で行われるからだ。

日本人から見て、中国人旅行者といえばデパートや家電量販店で大量にお土産を買って帰る「爆買い」が象徴のように思われているかもしれない。イメージとしては、銀座や秋葉原でたくさんの買物を抱えた姿だ。しかし、それはすでに変化しつつある。今中国人にとって熱い観光地は何と青森と佐賀だ。

日本在住12年、そして日本のリサーチ企業に勤務する中国人として、その実態を解説してみたい。

リピーターが変えるインバウンド

2016年から17年にかけて、「外国人の延べ宿泊者数」が伸びた県のトップ10は、上から大分、福島、青森、秋田、岡山、熊本、鹿児島、佐賀、徳島、岩手の順だ。特に、訪日観光客の30%弱を占める中国人の間では、青森や佐賀が話題となっている。私の周りでは、昔は東京や大阪の観光地についてよく質問をもらっていたが、最近は地方(青森や佐賀など)について教えてほしいとの要望がめっきり増えた。

                       観光庁平成30年宿泊旅行統計より

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「なぜそんなところに?」と思うかもしれないが、それを理解するには中国人の観光事情を理解する必要がある。

 まず、「中国人が海外へ行くことはそれほど簡単ではない」ということだ。どこに行くにもビザが必要で、しかもそのビザを取るのに面倒な申請をしなくてはならず、せっかく取っても有効期限が短い。

 中国人が観光に行く先で一番多いのはタイである。タイは行った先でビザが取れるので人気がある。面倒な申請が無いからだ。次が日本だ。日本のビザは事前申請が必要だが、一度取ると有効期限が1年〜5年(経済力などによる)と長い。一度ビザを取ると次は不要になるため、日本へはリピートしやすい。

 リピートが増えるとどういうことが起きるのか? 「東京と京都、富士山はもう行ったので、今度はスキーに行きたい。陶芸もしてみたい」と友人の申さんは話す。中国人に限らず、旅行先で新しい体験をしたいと思うのは自然なことだろう。

 観光庁の「平成29年訪日外国人消費動向調査トピックス分析」によると、中国人の観光客は、リピーターになると都市部に行く割合が落ち、地方部に行く割合が高まることが報告されている。しかもリピート回数が増えるほど支出も高まる。

 例えば青森であれば、スキー場も温泉も楽しめる、特産のリンゴが食べられる、桜も楽しめる、山登りもできるといった声が中国人観光客から聞かれる。

出典:ITmedia

LCCと直行便、QR決済の影響

 佐賀と上海は春秋航空のLCC(格安航空会社)で結ばれていて、天津と青森は直行便があるなど、アクセスの良さも効いている。最初は東京や京都に行っても、2回目、3回目は青森や佐賀に行ってみようとなる。

 中国は地方都市でも大きな街が多く、大気汚染もある。青森や佐賀は好奇心を満足させてくれるだけでなく、中国人の「田舎のきれいな空気が吸いたい」という欲求も満たしてくれるのだ。

 さらに青森はWeChat Pay(ウィーチャットペイ)やAliPay(アリペイ)対応を進めているので、中国人にとって歓迎されている雰囲気を感じ取れる。中国は、屋台であっても高齢の人であっても、QRコード決済を使う。そういった暮らしをしている人にとって、QRコード決済が使えないことは当然不便。中国人になじみの決済環境が整っていることは歓迎されていると感じやすい。

タクシーもウィーチャットペイで支払うのが、中国では普通だ

 WeChat PayやAliPayは中国人の生活に深く浸透していて、財布を持たない人も多い。また個人の信用を格付けするシステムがあるので、サービスを利用すると格付けが上がって特典がもらえ、さらに利用が促進される仕組みだ。

 そして佐賀県などが行っている動画による観光PRも効果が強い。しかも佐賀県は中国の動画サイト・Weibo(ウェイボー・微博)のアカウントを作って動画を流しているので、多くの中国人が目にする。

佐賀県が運営するウェイボーのアカウント

爆買い終了と中国の変化

 また、中国人による「爆買」の背景も知ってほしい。中国国内はまだまだ模造品リスクがあり、何も考えなくても本物の商品が買える日本の環境は魅力的に映っていた。日本への旅行が特別なことだった頃には、親族や友人から頼まれて大量の日本製品を買って帰っていた。だが、一通り欲しいものを買ったら今度は別なことをしたくなる。

 例えば「コミケで同人誌を買うなど自分の趣味に関することを体験する」「予約が取りにくい高級店で料理を楽しむ」といった、日本人でもやってみたいと思うことを中国人も同じようにしたいと考える。かつての日本人がパックツアーの海外旅行でブランド品を大量に買っていた状況から、徐々に変化し、多様化したのと同じだろう。

 「なぜ中国人は青森や佐賀が好きなのか?」と考えると分からなくなってしまうが、中国人が何か特別な行動をしているわけではない。つまり「旅行に何度も行く人がどのような行動をするか?」と考えれば、中国人が青森や佐賀に行く理由も、容易に理解できるのである。

 筆者は情報番組に出演し、中国人としてコメントをすることもあるが、日本のテレビは爆買、そしてマナーの悪い中国人を典型的な中国のイメージとして取り上げることも多い。おそらくそのような姿が強く印象に残っているからだとは思うが、筆者としては残念だ。

 しかし、当然ながら中国もどんどん変わっていく。モノに満たされたら今度は新しい体験をしたくなる。マナーについても自然にもっと質の高いマナーを求めるようになる。日本に来てこういうマナーは気持ちがいいと思えば、中国に帰ってから中国人にも同じマナーを要求するようになるだろう。日本への観光客が今後さらに増えれば、そんな効果も期待できるかもしれない。

出典:ITmedia

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