青森・八甲田「酸ヶ湯温泉」の名物・千人風呂で湯治気分を味わう!

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江戸時代から湯治客でにぎわった山のいで湯

青森市中心部から八甲田山麓を目指すこと約1時間、美しい森に包まれるようにしてたたずむ一軒宿「酸ヶ湯(すかゆ)温泉」に着く。300年以上前、傷を負った鹿がこの地ですぐに回復したのを見て、狩人が「鹿の湯」と名付けて利用したのが始まりという。酸性の強い湯であったことから、鹿の湯がいつしか酸ヶ湯という呼び方へと変わっていったのが宿名の由来と伝わる。

グリーンシーズンの酸ヶ湯温泉。奥には八甲田大岳が見える 写真提供:青森県観光連盟
グリーンシーズンの酸ヶ湯温泉。奥には八甲田大岳が見える 写真提供:青森県観光連盟

江戸時代には、現在の「千人風呂」の付近に地元の人が湯小屋を建てた。山に入る人々にも開放するようになると、薬効が高い酸ヶ湯温泉はたちまち評判に。そのうち湯小屋だけでは手狭になり、旅館棟を増築すると、たくさんの宿泊客でにぎわいを見せるようになった。1954(昭和29)年には、日光湯元温泉と四万温泉と共に、国民保養温泉地第1号に指定されている。

2月の「酸ヶ湯温泉」は積雪が2メートルを超えることも珍しくない
2月の「酸ヶ湯温泉」は積雪が2メートルを超えることも珍しくない

標高925メートルの高所にある酸ヶ湯温泉は、年間を通して冷涼な気候だ。夏でも20度を超える日はあまりなく過ごしやすい。一方、冬は国内有数の豪雪地帯になる。2013年2月には566センチの積雪を記録したこともあるほど。木造の建物に入り、和洋折衷の広々としたロビーを抜けると、右側にあるのが宿の名物として知られる千人風呂である。

「千人風呂」の入口。「酸ヶ湯」と書かれた大きなちょうちんが目印
千人風呂の入口。「酸ヶ湯」と書かれた大きなちょうちんが目印

総ヒバ造りの大浴場「千人風呂」 写真提供:酸ヶ湯温泉
千人風呂は総ヒバ造りの大浴場 写真提供:酸ヶ湯温泉


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総ヒバ造りの大浴場は160畳相当の広さがあり、手前に「熱の湯(ねつのゆ)」、奥に「四分六分(しぶろくぶ)の湯」という大きな浴槽、その周囲に「冷の湯」(かぶり湯)と「湯瀧」(打たせ湯)が配されている。

熱の湯は泉温41~42度で、程よい温度で長く浸かれる湯だ。四分六分の湯は泉温43度とやや熱めになっている。その名前からして、「熱の湯の方が熱いだろう」と思う人も多いが、これは体の温まり方を表現したもの。ぬるめの湯に長く浸かった方が体の芯まで温まることから熱の湯と名付けられた。四分六分の湯は熱いために長くは入れないので、温まり方が熱の湯と比べて「四分から六分くらい」という意味で命名された。

千人風呂には洗い場がなく、シャンプーもせっけんも置かれていない。混浴だが、原則として湯船の左が男性用、右が女性用となっていて、一部男性の立ち入れない部分には衝立(ついたて)が置かれている。朝8時から9時は女性専用タイムとなる。

冬は外との気温差もあり浴場内が濃い湯気に包まれる
冬は外との気温差が大きいので、浴場内が濃い湯気に包まれる

湯治を気軽に楽しめるのも酸ヶ湯の魅力

簡素な造りの湯治棟の客室
簡素な造りの湯治棟の客室

酸ヶ湯温泉の館内には、旅館棟と長期滞在用の湯治棟がある。この宿では、自炊も可能な湯治棟でのんびりと温泉に浸かり、時に周辺の自然散策を楽しみ、3泊くらいで湯治気分を味わう客が多いという。一般的な旅館より宿泊料金が手頃であることも大きいが、食事の時間などを気にせずに自由に過ごせるのがいいようだ。

東京から1人で宿泊に来ていた男性は、3泊4日の湯治をひと冬に3~4回しているという。風呂に入ったり、歩くスキーで雪山散策を楽しんだりと、酸ヶ湯温泉で過ごす休日が格別の癒やしになるようだ。歴史ある名湯での湯治は、都会での疲れを癒すのには最適かもしれない。

雪の大回廊を歩く「八甲田“雪の回廊と温泉”ウォーク」 写真提供:青森県観光連盟
雪の大回廊を歩く「八甲田“雪の回廊と温泉”ウォーク」。冬季閉鎖となっている八甲田・十和田ゴールドラインの酸ヶ湯~谷地間において、4月1日の一般開通直前に2日間だけ開催される 写真提供:青森県観光連盟

【DATA】

  • 住所:青森県青森市荒川字南荒川山国有林小字酸湯沢50
  • アクセス:JR青森駅から車で1時間
  • TEL:017-738-6400
  • 料金:1泊2食付 1万950円~
  • 多言語対応:HP…英語/中国語(簡体・繁体)/韓国語

●周辺情報

奥入瀬渓流

東北を代表する清流「奥入瀬渓流」 写真提供:青森県観光連盟
東北を代表する清流・奥入瀬渓流 写真提供:青森県観光連盟

十和田湖を水源とし、約14キロにわたって続く奥入瀬渓流。ブナの巨木やカツラなど広葉樹の森に包まれ、澄んだ水がとうとうと流れている。遊歩道が整備されていて、緩急の変化や滝などを眺めながらの散策が楽しめる。レンタサイクルで巡るのもおすすめ。

また、冬の奥入瀬渓流では滝が凍り、ダイナミックな氷瀑(ひょうばく)が見られる。国道102号は除雪されていて八甲田ほど雪も多くないので、冬景色を楽しむにはちょうど良い場所だ。

【DATA】

  • 住所:青森県十和田市奥入瀬
  • アクセス:東北自動車道十和田ICから1時間10分、酸ヶ湯温泉から車で約30分
  • TEL:0176-75-2425(十和田湖総合案内所)
  • 多言語対応:HP…日本語/英語、パンフレット…日本語/英語

取材・文・写真=シュープレス
(バナー写真=酸ヶ湯温泉の名物となっている「千人風呂」 写真:酸ヶ湯温泉)

出典:Nippon.Com

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