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青森)ナマコの煮汁 廃液活用に挑む 青森の加工会社
青森県陸奥湾でとれるナマコはアジア圏にも輸出される高級食材だが、その過程で長年捨てられてきたものがある。グツグツとナマコを煮た後に残った汁だ。大量に出る廃液に着目した県内の企業が今年、そこから抽出した成分の販売を始めた。
青森市卸町にある海産物加工会社「大豊」。ナマコ加工場の近くに、広さ200平方メートルほどの小さな研究室がある。
室内の一角に保管されている複数の筒状の容器に、ふわふわした黄色い粉末が入っていた。ナマコに含まれるホロトキシンという成分を粉末状にしたものだ。
「かなり濃い、効能が強いものです」と同社なまこ製品開発室長の安田明弘さん(64)。1グラム20万円と高額だが、今年6月、初めて企業向けに販売した。販売先の企業は、このホロトキシンを使った商品開発に取り組んでいるという。
ホロトキシンは抗菌や殺菌の作用があるとされ、ナマコ本体から抽出されて一部で水虫の薬として用いられている。しかし、研究室で作られているホロトキシンは、ナマコ本体ではなく、ナマコを煮た後に残った汁から抽出したものだ。「ナマコの煮汁はこれまで捨てられ続けていた。それを活用しようと思った」
大豊では塩蔵ナマコや乾燥ナマコの輸出を手がけ、多い時には年間約10億円を売り上げている。その過程で、ナマコの水分を逃がすために煮出す作業があるが、年間200トンほど出るその煮汁は、これまで捨てられていたという。
「ナマコを取る漁師さんが、手のひび割れやあかぎれが治ると話していて、不思議に思っていた」と安田さん。サポニンやコラーゲン、そしてホロトキシンなどの成分を含むことで知られるナマコだが、本体から出る煮汁にも効能があるのではないか。10年ほど前から弘前大学と共同で研究を始め、煮汁にホロトキシンなどの成分が含まれていることを発見した。
2014年に完成した研究所では、1日で数十リットルの煮汁の処理ができるが、抽出できるホロトキシンはわずかに0・2グラムほど。作業はナマコ製品の配達や受注などの事務作業と並行し、安田さんが一人で行っているため、1週間に約1グラムを抽出するのが精いっぱいだ。
それでも安田さんは、廃液だった煮汁の新たな需要に期待を込める。「元々は捨てていた廃液。このホロトキシンが新たな商品化につながれば、需要は増えてくるのではないか」
課題は価格だ。現在は研究所の規模が小さく大量生産ができないため、ホロトキシンは1グラム20万円と高額になっている。
需要が高まって大量生産ができれば値段も下がってくる。「高ければ医薬品などにしか使われないが、安くなれば飲料やハンドクリームなど手が届きやすい商品になる」と、安田さんは期待を寄せる。
県などによると、ナマコの漁獲高はこのところ年々減少し、値段が高騰している。安田さんは「捨てていたものを有効利用して、いずれは事業の柱の一つにしていきたい」と意気込んでいる。
出典:朝日新聞
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